ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 いつかメルヴィが王になった時、そしてメルヴィの子供が王太子になった時――
 その子供に魔女の血が流れているということは、この国の人々にとってどれほど恐ろしく、そしてどれほど不安定なことになるだろうと想像する。

 そしてそこまで考え、思わず小さく吹き出した。


「リリ?」

 突然笑った私の顔を不思議そうに覗くメルヴィ。

“何で私がこのままメルヴィと結婚するつもりなのかしら”

 彼は私の魔法で惑わされているだけなのに。
 いつこの魔法が解けるかもわからないのに。

 
「……ううん、何でもない。昨日のソファ大丈夫かなって思い出しただけ」
「あー、まぁ案外しっかり引っかかってたから大丈夫じゃないかな? リリが気になるなら屋根に足場を作って天体観測出来るようなスペースを作ろうか」

 少し重苦しくなった心を誤魔化すように話を振ると、メルヴィもふっと口角を緩めながら答えてくれた。

 メルヴィと一緒に空を飛んだあの夜。
 彼の側近であるダニエルが頑なに却下したことによって私たちは彼が顔を出した窓から城内へ戻り、空を飛んだソファはあのまま屋根に乗ったままになっている。
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