ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「待ってください。リリは今俺と住んでいるんです」
「? リリアナ、ここはお前の家か?」
「え」
聞かれた質問に即答できない。
家か、と聞かれたらここは私の家ではなく、帰るべき家に入れなくなった私が間借りさせて貰っていたという印象が強くて。
「リリ……っ」
けれど、私を見つめるメルヴィのその瞳が、“置いて行かないで”と確かに言っているように見えて。
“母に捨てられた時の私もあんな顔をしていたのかしら”
その顔を見てしまった私は、あまり覚えていない過去の自分と彼を重ねる。
きっとあの時の私は、酷く傷つき不安定だった。
“だから覚えてないのかしら”
魔女の私が、思い出したくないと切実に願ったから無意識に魔法が発動し忘れてしまったのだろうか。
そして忘れてしまうほどの辛さに、今メルヴィが襲われているのだとしたら。
「……まだ、行けません」
「魔法は成功したんじゃなかったのか?」
「それはそう、なんですけど。でも、ここですごくいろんな人にお世話になったから」
「そうか、ならいい」
「ッ!」
あっさりとそう口にした師匠にドキリとする。
“また置いて行かれるの?”
「? リリアナ、ここはお前の家か?」
「え」
聞かれた質問に即答できない。
家か、と聞かれたらここは私の家ではなく、帰るべき家に入れなくなった私が間借りさせて貰っていたという印象が強くて。
「リリ……っ」
けれど、私を見つめるメルヴィのその瞳が、“置いて行かないで”と確かに言っているように見えて。
“母に捨てられた時の私もあんな顔をしていたのかしら”
その顔を見てしまった私は、あまり覚えていない過去の自分と彼を重ねる。
きっとあの時の私は、酷く傷つき不安定だった。
“だから覚えてないのかしら”
魔女の私が、思い出したくないと切実に願ったから無意識に魔法が発動し忘れてしまったのだろうか。
そして忘れてしまうほどの辛さに、今メルヴィが襲われているのだとしたら。
「……まだ、行けません」
「魔法は成功したんじゃなかったのか?」
「それはそう、なんですけど。でも、ここですごくいろんな人にお世話になったから」
「そうか、ならいい」
「ッ!」
あっさりとそう口にした師匠にドキリとする。
“また置いて行かれるの?”