ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
ずっと側にいてくれた兄であり親であった師匠に、また置いて行かれるのかもしれないと思った私のその考えが私の顔にはっきりと出てしまったのか、私の表情を見たメルヴィが傷ついた顔をして。
“何をしているんだ、私は……!”
メルヴィを傷つけたかったわけではないのに、顔に出してしまったことを後悔した。
だがここにはずっといられない。
その前提がある以上、このまままた師匠を送り出すとすぐに決断することもできなくて。
「わかった。家で待ってるから、区切りがついたら帰ってこい」
そんな私の気持ちを察したのか、師匠がそんなことを口にした。
「待って、る?」
「あぁ」
「だってその、すぐに出るんじゃ」
「リリアナがまだ行けないと言ったんだろう」
“それはそうなんだけど”
純血の魔法使いである師匠は、その血の濃さから習性に抗うことがより難しいはず。
それなのに、習性より私を選んでくれたようで驚いた。
「そんなには待たない。決めたら言え」
「あ、はい……」
唖然としている私にそう言い残した師匠は、そのままふらりとその場を去った。