ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 どうしたらいいのかわからず、こそっとメルヴィの方へ視線を向けると彼も自身の服をバサリと脱ぎ捨てて。

“!”

 ハッキリとした場所で見る彼の、案外鍛えられていた体にビクリとし慌てて背中を向ける。
 バクバクと痛いほど鼓動が跳ね、じわじわと顔が熱くなった。

「リリ」
「ひゃっ」

 苦しそうに呼ばれた名前が思ったよりも近くで聞こえ、小さく体が跳ねるがメルヴィはそんな私には構わず浴槽へシャワーを出し始める。
 この落ち着かない状態にどう対処したらいいかわからず、だが変に視線を泳がすのも躊躇われた私は、まだ全然湯の溜まっていない浴槽へ視線を固定するしかできなくて。

「俺があの時薦められた石鹸はね、新婚向けの石鹸だよ」
「新婚用の?」
「あぁ。俺はリリしか選ばないから」

 そう言いながらちゃぽんと浴槽にピンクの小さな塊を投げ込むメルヴィ。
 どうやらその塊こそが買った石鹸なのだろう。

“石鹼って、体を洗うためのものよね?”

 泡立てるどころか浴槽に投げ入れたことに驚いていると、すぐに浴室内を薔薇のいい香りが体を包んで驚いた。


「薔薇の香りには興奮させる作用があるらしいよ」
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