ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 気軽に手を取っていいのか迷っているとそのままきゅっと私の手を握り彼が手を引いた。

「あ……!」
「さっきも手を繋いだでしょう?」

 驚いた様子の私に怪訝な顔を向けた彼は、小首を傾げてこちらを見る。
 確かに私が魔法をかけた時、彼とは既に手を繋いだけれど……

「あの時は貴方が王太子だと知らなかったので」

 流石に王太子だと知った以上、気楽に触れることには抵抗がある。

“いざというとき逃げ出さなきゃいけないんだもの、顔を知られるのもまずいし”

 ここはまだ王城の外門をくぐったばかりの外回廊。
 誰に見られるかわかったもんじゃない。
 そしてそれは彼側にも言えることだと思ったのだが。

「……貴方?」
「え」
「名前はさっき教えたと思うんだけど」
「え、え?」

“まさかの、そこ……!?”

 想定外の部分に引っかかったらしい彼は、ムッとした表情でどんどん顔を近付けてきて。

「ち、ちかっ、近い、近いですけどっ」
「な、ま、え」
「ち、近いんですってメルヴィ殿下ッ!!」
「殿下?」

 言われた通りちゃんと名前を呼んだのに、まだ不服そうな顔を向けられ唖然とする。
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