ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「ど、どうするって」
「二択だよ。リリが自分で手をどけるか、俺に手を無理やり剥がされるか」

 メルヴィが私の手を剥がすということは、私の体を支えている手を離すということで。
 そうなれば自動的に彼のモノをいきなり奥まで受け入れることになるのだろう。

 だが羞恥心を堪え自ら胸をさらけ出せば、ほぐす時間は与えられるということだ。

「手をどけたらどうなるの?」
「どうもならないよ。逃がす気はない、抱く」

 抱く、と言った彼の声にやはりどこか棘を感じ胸が痛む。
 
 体を重ねるつもりだった。
 けれど、こんな感情をぶつけるような行為としてではなく、あの日メルヴィと触れ合ったように互いを求めるような温かい時間を望んでいたのに。
 
“それが最後には私だけの思い出になるのだとしても”

 幸せに包まれるような時間になるのだと疑わなかったのに。

 
「どうせ最後にはリリのナカに挿入するよ。どっちを選ぶ?」
「そんなの……」

“選択肢なんて最初からないじゃない”

 はぁ、と思わずため息が漏れる。
 私がため息を吐くと、メルヴィの目が一瞬揺れたように見えた。

 
< 154 / 231 >

この作品をシェア

pagetop