ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 ごくりと唾を呑んだ私が意を決して胸から手をどけると、彼の眼前に赤く腫れた乳首が晒される。


「……あの時は、リリから舐めさせてくれたよね」

 そういえばそうだった。
 舌を出したメルヴィの口元に自ら差し出すように胸を突き出して。

“もっと深く触れて欲しくて仕方なかったわ”

 
「流石にもう、そんなことしてくれないよね」

 ぽつりと漏らすようにそう言ったメルヴィは、あの時とは違い自ら私の胸へ顔を寄せる。
 彼の声がさっきまでの怒りを孕んだものとは違い、苦しく、そして悲しそうに聞こえて心臓が締め付けられるように感じた。
 
 違う、拒絶したいんじゃない。ただ私はメルヴィと一緒に先を知りたかっただけなのに。

 そう伝えたいのに、伝えなくちゃいけなかったのに、その言葉を口にする前にメルヴィの舌が私の乳首を弾いて。

「んぁあ……ッ!?」

 指で与えられていた刺激とは全然違うその快感に言葉が絡めとられ、言葉ではない声が私の口から零れ出す。

「やぁ、あっ、あぁん!」

 チロリと先端を掠めるように舌が撫でたかと思えばぢゅっと突然強く吸われる。
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