ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「そう」

 私の魔法で彼の気持ちが変わったのなら、それはなんて虚しいことなんだろう。

 
 ――私は彼の優しさにどんどん溺れていくのに。

“だからずっと思ってた”
 
 私の魔法が失敗していたら。
 もし彼が私へ向けてくれている気持ちが魔法のせいじゃなくて本物だったなら、それはどんなに幸せなことなのだろうかと。


「メルヴィが、私の魔法のせいじゃなく……本当に私を好きならいいのにって思ってたの」
「俺はっ!」

 慌てて口を開こうとする彼の口に指を当てて言葉を遮った私は、ゆっくりと首を左右に振った。


「……どんなに違うって言われても、魔法が成功した可能性がある以上は信じるわけにはいかないわ。だって私は願いを叶えられる魔女で……メルヴィのことを想ってるんだから」


 私の話を聞いたメルヴィの瞳が再び揺れる。
 傷付けたい訳じゃないけれど、どうしてもこの一線を考えない訳にはいかないから。

“でも、私の気持ちは本物だから”


 滲む彼の目尻にそっと口付けを落とした私はそのまま彼の頬へと唇を滑らせて。
 そっと彼の唇へと口付けを落としたのだった。

 
 
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