ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 痛いほどの想いを向けられ、そして私だって彼を想っているのに。
 
 一人残された部屋でボスンとベッドに顔を埋めた私は、何が正解だったのだろうと考える。

 私が魔女であり、そして彼に魔法をかけたことは事実。
 魔法が成功しているかしていないか、目で見てわかる類のものではない以上魔法はかかっていて、そしていつか解けてしまうものだという想定で動かなくてはならないのだ。

「魔法を重ね掛けする?」

 永遠に好きでいてくれますように、と。

“そんな偽物の気持ちの何が嬉しいの”

 
「師匠ほどの魔法使いなら、解けるんだろうけど」

 師匠に頼んだところで、師匠の興味を引けなければそんなことしてくれないだろう。
 むしろ自分の責任は自分で負えと言い放たれる未来が見えた。

 
 今までまともに成功した魔法は、多分成功した気がしているメルヴィにかけた魔法と、メルヴィと一緒にソファで屋根まで飛んだ魔法。
 一人で箒に跨った時は結局制御が出来なかったので、あれはノーカウントである。

「どっちもメルヴィ関係じゃない」

 数少なすぎる成功例が全て彼関係だと気付き小さく噴き出す。
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