ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「顔で選んだつもりだったんだけど」
 
 よっぽど彼にいいところがみせたいらしい私は、もしかしたら一目惚れというやつだったのかも、なんて考え――


「そういえば、もう一個あったわ。成功していたかもしれない魔法」

 ふとそう気付き上体を起こした。

 どうせここには私しかいない。
 多少お行儀が悪くても、そもそも私は貴族でもなんでもないのだから大目に見てくれるはず、と考え胡坐をかいて枕を抱きしめた。

“昔のことが思い出せないのはなんでだろう”

 浴室で気付いたその事実。
 単純に昔のことを覚えていないだけだとしても、キッカリ十歳以前を覚えていないというのは流石におかしいのではないだろうか。

 私の記憶は、師匠の家に連れてこられたその日から始まっている。
 子供ながらに母から置いて行かれたというショックで思い出さないよう記憶の奥深くに閉じ込めた可能性もあるけれど。

「忘れたいって願った可能性もある、わよね」

 だって私は魔女だから。
 本気で願えばそれが叶う存在だから。

 そしてもしメルヴィのいうように、過去に私と会っているのだとしたら――


「十歳以前に会っているのなら」
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