ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

22.ひとりぼっちの私とあなた

 自分が何故そんな言葉を口走ったのかがわからずきょとんとする。

 ――私、何を言ってるのかしら。


“期待しない? むしろ期待しかないじゃない”

 だって彼はこの国唯一の王子で。
 いつも笑顔が眩しい王太子で。
 さっき言っていた執務が嘘だとわかるほどスケジュールを完璧にこなし仕事を捌いていて。
 魔女に対しても理解があって。

“普段お忍びでよく街にも行っているようだから街の人たちの暮らしにも詳しいし”

 私が魔法を失敗して廊下を水浸しにしてしまった時も、彼はエッダに謝罪すべく頭を下げた。
 王太子である彼が軽々しく頭を下げる行為がよくないことは分かっているが、それでも相手の身分が自分より下だからと見下すような人じゃないからこそ出来る行動でもあって。

「王太子としての責務も、上に立つ人としての資質も持ち合わせた完璧な王子なのよ。誰もが期待するような……」


 そう、この国唯一の王族の血を引く子供に、みんなが期待していたのだ。
 それが当然だったのだ。

“何? なんで突然こんなこと……”


 まるで脳内を乱雑にかき回されているような違和感に眩暈がする。
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