ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 脳内に駆け巡るその思考は確かに私のもので、私の記憶だとわかるのにうまく繋がらない。
 
 考えたくない。知りたい。忘れたい。思い出したい。

 整理できないそれらの感情に戸惑い、少し落ち着こうとメルヴィがベッド横にあるサイドテーブルに置いておいてくれたミント水に手を伸ばそうと顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、大きな本棚だった。


「そうだ、あそこの棚の左から四冊目が薬草の本があるんだったわ」

 それは初めてこの部屋に足を踏み入れたと思っているあの日にも感じた『確信』。
 まるで誘われるようにそろりとベッドから降りた私は、そのままふらふらとその本棚に近付く。


 ――あぁ、あの時は精一杯背伸びしてやっと届いた高さだったのに。

「こんなに低いところにあったのね」

 今では胸の高さの棚に今もあったのは、一冊の薬草の本だった。


 パラリの捲ったその本は、どうやら薬草の種類別に載っているのではなく薬草がもたらす効能順に載っているようで。
 何度も開かれたのは前半のページのみだったのか、後半のページは手垢どころか開き癖ひとつないほどきれいな状態だった。
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