ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 平和な時代だからこそ成立したその言い分は通り、この国唯一の王子であり王太子になったメルヴィ。
 幼い彼のその小さな両肩にすべての期待がのしかかったのだ。

 
 母を喪ったと嘆く暇がないほどの王太子としての教育。
 唯一というその期待と、お前しかいないのだというプレッシャー。

 小さな肩にかかるその重みは、きっと彼にしかわからない。


 けれど彼は幼い頃から王太子だった。
 その責任と期待を受け止め、子供という時間を犠牲にした。

 泣く場所などなかった彼の、きっと唯一の息抜きがこっそり抜け出したあの時間だけ。
 一人の時にだけは王太子ではなく、まだ幼い子供でいられる、そんな時間に――私は飛び込んでしまったのだ。
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