ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
『失敗したらダメなの?』
『そう。僕は失敗したらダメなんだ』

 哀しそうに笑った彼のその言葉になんて返したらいいのかわからなかった。
 子供だとか大人だとか関係なく、人は失敗する生き物なのに。

“そんなことないよ”と、“失敗してもいいんだよ”と伝えたかったが、どう言えばいいかがわからなくて。
 
 
『失敗して、落胆されるのが怖いんだ。期待外れだったとそう思われるのが怖いんだ』

 それがきっと彼の本音で、その小さな体に隠した真実。
 まるでひび割れたカップから少しずつ中身が滲み漏れるように、じわりと溢れるその本当を守ってあげたくて。



「じゃあ、私は期待しない。私だけは期待してないからねって」

『だから、そのままの君でいていいんだよ』って。

 
 最初から期待されてないなら気負う必要もないからと。寄りかかってもいいのだと。


「私、メルヴィにそう言ったんだわ――……」



 私が確かに幼い彼に言ったんだ。
 私たちは幼い頃に会っていたんだ。


「気になる、ねぇ、気になるの」

 貴方を抱きしめた後私たちはどうなったの?
 最後に会ったのはいつだったの?
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