ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「薬草畑? ううん、あそこは外から丸見えだし」

 ならあの迷路はどうか、と考えたが、ピンとはこなかった。

「流石に屋根に引っかかったままのソファじゃないわよね」

 想像し、一瞬あり得そうな気もするが、慌てて頭を左右に振りその考えを追い出す。
 万一落下すれば大変なことになるあの場所に、責任感の強い彼が一人で行くことはないだろう。


“私の部屋も、彼の部屋も違う、執務室にはいないだろうし……じゃあ、どこに行っちゃったの?”

 私が魔法をかけた街も考えたが、警備的な部分できっとその場所も選ばない。


 気になる。
 どうしても気になるの。
 どうしても知りたいの、貴方の側に行きたいの。

 だから、お願い。


「メルヴィのいる場所が知りたい、どうしても行きたい」

 両手をぎゅっと強く握る。
 メルヴィのことだけを考え、彼のいる場所をただただ求めて。
 
 私は強く強く、乞うように願ったのだった。




「こんなところにいたんだ」
「……」
「ねぇ、こっちにきたら?」
「……」
「じゃあ私がこの窓を飛び越えようか」

 
 ある廊下の奥まった突き当たり。
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