ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 私の推測が正しいのなら――


「教えて、私をどうやって傷つけたのか」


 はっきりそう告げると、俯いたままの彼が突然立ち上がり振り向いた。
 城内の床は外の地面より高いのだろう。
 いつもより彼の顔が近く、私を傷つけたのだと『誰よりも自分を傷つけた顔』で私にそう言ったメルヴィの顔がよく見える。

 
「もうすぐ置いて行かれるのだと言った君に、僕は二度と会えないんだと八つ当たりした」
「それは、そんなに傷つける言葉だったの?」
「死ぬまで側にいてくれる母と、生きていても置き去りにする母とどっちがいいんだろ」

 
『死ぬまで側にいてくれる母と、生きていても置き去りにする母とどっちがいいんだろ?』

 その言葉がトリガーだったかのように、忘れていた過去を思い出す。
 そうだ、私は確かにそう告げた。
 そしてもうそのことを思い出したくないと強く“願う”ほど、ショックを受けたのだ。


「俺は、リリのその言葉に何も言えなかった。思ってしまったんだ、捨てられるなら愛されていた自分の方が幸せなんじゃないかって。そんな最低なことを、俺は……」
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