ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“あぁ、これは辛いわ、幼い私が忘れたいと願ったのもわかる”


 ズキズキと痛む心臓。もし目に見えるならばきっと今大量の血を流しているのではないかと思うほど苦しく熱い。

 ――だって彼が、私のせいで今にも死んでしまうのではないかと思うほど辛そうな顔をしているのだから。


「王太子ではなくただの子供として対等に見てくれたリリに、俺は救われていたのに。なのに俺はっ」
「傷付いてなんか、いないわ」

 自分を責め続ける彼の言葉を遮るように言葉を重ねる。

「傷付いてなんかないの。私は魔女。もちろん子供だったから連れてって欲しいと思ってはいたけれど――でも、魔女の習性は血に刻まれている。だから納得はしていなくても理解していた。こんな風に決別する日が来るものなの。親子であっても、私たちは魔女同士だったから」


 いくら血の繋がった親子だったとしても、全く同じものに興味を持つわけではない。
 遅かれ早かれいつかは互いに興味があるものを見つけ、別々の道を歩む。

 それが魔女という存在。
 私と母の場合は、その日が予想よりずっと早かったというだけのことなのだ。
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