ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 ふふん、と少し得意げに笑うと今度はぽかんとした顔になるメルヴィ。
 
「好きにさせる魔法をかける以前からメルヴィが好いていてくれたこともわかったし……それに、私、期待してないみたい」
「!」


 ――それは幼い時に伝えた言葉だった。

“小さな肩に大勢の無責任な期待を背負わされ、そしてその期待に応えようと踏ん張っていた少年”


「だって私は魔女だもの。メルヴィの立場になんか興味がないから、期待したくても出来ないわ」
「……ははっ、俺、一応この国の王太子なんだけど」
「私にとってはただのメルヴィよ」

 落ち着いているようでいて、少しおっちょこちょい。
 格好つけてるくせに泣き虫で、そんなところが幼い頃から変わらないひとりぼっちの少年。


 貴方が何に嘆き、何を重荷に感じていても私には関係がないのだ。
 理想未来にも興味なんてないの。
 
「どう思われても、興味があることに抗えない」

 ずっと見つからないと思っていた、私のたったひとつ興味を惹かれるもの。
 私だけの唯一。

「メルヴィが関係している時だけ魔法が成功したのは、私がメルヴィのことばかり考えていたからだわ」
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