ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「俺のことばかり?」

 私が期待しているのは。
 抗えないほど興味を惹かれたのは。

「メルヴィ、貴方自身よ」

 彼に押し付ける理想の未来になんて興味がない。
 私は、彼が作りたいと思い進む、そんな未来に興味があるのだ。


「失敗したなら助けを乞えばいいじゃない。無理して完璧でいる必要なんてひとつもないの」
「ひとつも……」

 
 魔女の魔法は、願いの強さで発動する。
 私がいつも失敗していたのは、願いの強さが足りずに集中できず分散してしまっていたから。
 
 そして今だからこそわかる。

“あんなに失敗していて欲しいなんて思っていたのに”
 
 もし彼が私を好きじゃなくても、魔法が成功していてもしていなくても。

 私の興味が全て彼に向けられているなら関係ないから。
 本当に私を好きだったら、と願い、期待して振られたとしても一緒なのだ。

 私が魔女である以上、結局最後には興味の対象である私の唯一に夢中になっているだろうから。


「私が、完璧じゃないそのままの貴方を好きだから」

 頬に添えた手に少し力を込めて自身の方へと引き寄せる。
 
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