ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 ちゅ、と唇同士を重ねると、彼の紺の瞳の周りに朱が差した。
 それを見届け両目を伏せる。

 最初は少し恐々と、けれどすぐに熱く私を求めるように彼の手のひらが私の後頭部の添えられて。


「ん……っ」

 くちゅ、と彼の舌が私の唇をなぞるように動かされた。
 口内に割り込もうとする彼の舌を、固く唇を閉じて拒んだ私は、彼の頬に添えていた手でぐいっと頬を押さえつける。

「ずっと窓越しなの? 私、さっきのダメージがまだ残ってるんだけど」
「っ」
「足の力が抜けて崩れ落ちたらどうやって支えるのよ」
「それは……」

 彼から離れるように一歩後ずさった私は、そのまま小部屋のドアノブに手をかけて。


「メルヴィ」

 小さく名前を呼ぶと、ごくりと彼の喉が上下した。

 私が求めてることを察した彼は、そのまま窓枠を飛び越え城内へ入る。
 ドアノブを持つ私の手に自身の手を重ねたメルヴィが、カチャリと扉を開いて。


「……俺も本当に入っていいの」

 まだ浴室でのことを気にしているのだろう。
 
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