ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 たったそれだけのことなのに。
 
“私の名前ってこんなに特別だったんだ”

 好きな人に呼ばれるというその幸福さに溺れそうになっていると、いつの間にかメルヴィの手がするりと私の服の裾から入ってきた。
 優しくお腹を撫でる彼の手がくすぐったかった私は小さく笑ってしまう。

「ふふ、くすぐったい」
「嫌じゃ、ない?」
「嫌だったら誘ってないわ」

 先にキスしたのも部屋へと誘ったのも私なのに、まだ少し躊躇っているのか不安そうに窺うメルヴィの手を服の上から掴んだ私はそのまま自身の胸へとあてがった。

「勘違いしてるみたいだけど、私、お風呂でされたこと……嫌じゃなかったんだから」

“確かに突然だとは思ったし、もっとゆっくりして欲しいとは思ったけど”

 でも、嫌じゃなかったのだ。
 だって私に触れているのも、そして私を求めてくれていたのも君だったから。

「ね、今度はちゃんと、二人でシよう……?」
「ッ」

 下から見上げるようにそう口にすると彼の頬が一気に赤くなる。
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