ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 窓の外で縮こまっていた時には届かなかったその髪を指へ通すように撫でると、胸元へ顔を埋めていた彼がそっと顔を上げた。

 
「大好き」
 
 このタイミングに意味があったわけではないが、なんとなく今言いたいと思った気持ちを彼に告げる。
 少し紺の瞳を見開いた彼はすぐに蕩けるような笑顔を溢し、私に口付けて。

「俺も、ずっとずっと好きだった」

 その言葉が私の耳を甘くくすぐる。
 温かくて幸せで。

 あぁ、私が知りたかったのはこういうことなのだ。

“メルヴィと知りたい、この先もちゃんと、一方的ではないふたりでの行為を”


 彼の唇が頬に滑り、耳たぶを食む。
 そのまま顎をなぞり首筋に吸い付かれると、ピリッとした鋭い痛みが走り痕をつけられたのだと察した。

「…………」

 思わずぽかんとして彼を見上げると、少し気まずそうメルヴィが視線を外す。

「ごめん、ダメ……だったかな」
「私も」
「?」
「私もつけたいわ!」

 ぱぁっと表情が明るくなっただろう私を見て、今度はメルヴィがぽかんと私を見る。

“だって仕方ないじゃない、気になったんだもの”

 ピリッとした甘い痛み。
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