ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 花びらがふわりと舞うような穏やかな風がその明るい薄茶色の前髪を揺らす。
 
 その光景が、その雰囲気が。
 それらの言葉がまるで本心なのだと証明するように真っ直ぐ私の心へと吹き抜けて。


“可愛いのは、どっちよ”


 向けられるこの感情が私の魔法による偽物だとわかっている。
 それでもその表情を見て芽生える私の気持ちは本物だから。

 この魔法が解けるまで一緒にいるのも悪くないと、改めてそう思ったのだった。
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