ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「恋?」
「それ、何年か前にも聞いたんだがな」

“なんで話してしまったんだ、俺は”

 面白いものを見るように俺へと視線を向けるのはもちろんレベッカである。

「いいじゃない、素直になりなよ、楽になるわよ?」

 へらへらと笑う彼女にもやっとした気持ちが芽生え内心首を傾げる。

“なんでいつもレベッカから言われるこの話題がこんなにイラつくんだ”


「楽になるかなんて知らん。そもそも相手は子供だ」
「私にとってのテオと同じってことじゃない」
「は?」
「だってテオは私よりも九つも下なのよ? 六歳下の女の子が子供なら九つ下のテオだって私から見たら子供じゃない」
「子供ではない!」
 
 さらっと告げられたその言葉に思わずカッとする。
 ガタンと音を立てて立ち上がった俺に、流石のレベッカも驚いたのか口をあんぐりと開けた。

「ちょ……、そんなに怒らなくてもいいじゃない」
「怒っては、ない」

 自分でも歯切れが悪いのは、俺自身がこんなに感情が揺れるとは思っていなかったからだった。

「子供扱いが不服だったのかもしれん」
「そ、そう? そう……よね。十八だもんね。ううん、それ以前に対等な仕事仲間に言うことじゃなかったかも。ごめんなさい」

 あっさりと頭を下げるレベッカ。
 だが“仕事仲間”という言葉がツキリと胸に刺さった。

「いや、俺こそ怖がらせて悪かった」
「ううん、全然。ごめんね、変な事言って」
「構わない」

 再び謝罪を口にするレベッカに、もう気にする必要はないと伝えるように大きく頷く。
 俺のその行動を見てやっと安堵したのか、じわりと血色を取り戻した彼女がほっと微笑んだ。

“!”

 その顔が可愛い、と反射的に思い、何がだろうと疑問が芽生える。
 こんな感情は全て初めてで、だがそれ以上考えても答えがでないと判断した俺は今度は一人頭を左右に振ったのだった。
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