ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 隠す意図はなさそうだが、それでも人目にはつきにくいその扉は大きな通路側からは死角になっているものの、扉の近くにある窓からは太陽の光が射し込み決して嫌な雰囲気には感じなくて。


「気になる……!」

 さっきまで凪いでいた私の心臓が途端にトクントクンと音をたてる。


 気になる。
 中に何があるのか、中がどうなっているのか。

 ごくりと唾を呑んだ私は、いざその扉を開くべくドアノブにそっと手を掛けて――……


「開けちゃうの?」
「ひぇっ!?」


 完全に意識を扉へと集中していた私は、真後ろから聞こえたその声にビクリと肩を跳ねさせた。

「め、メルヴィ!?」

 いつの間にか私の背後に立っていたメルヴィは、扉を開けようとしている私の手に自身の手を重ねて。
 
「ここは、まだダーメ」
「えっ! 全部見ていいって言ったのに!?」
「うん、全部構わないよ。けれど、この中を知ってしまったらもう戻れないけどいいのかな?」
「戻れない……?」

 ごくりと生唾を呑む。

 ――この中を知ったらどうなるんだろう。
 そんな言い回しをされたら余計気になるに決まっている。
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