ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 気になって気になって仕方ない私は、ドアノブに掛けた手により力を入れて。
 

「……ちなみに少し焦らすとより楽しくなると思うけど」

“た、楽しく!?”

 その一言にピタリと停止した私は、すぐにメルヴィを振り返った。
 

「焦らすって、どれくらい?」
「さぁ。その時がいつ訪れるのか、そこも気にならない?」

“今見るか、その時が来てより楽しいタイミングで見るか……!?”

 その『より楽しい』がどれほどのものなのか、知るその瞬間がいつ訪れるかも確かめねばならないのだとしたら。


 魔女とは好奇心を抑えられないもの。
 
 部屋がより気になった今、すぐにでも中を暴きたい衝動よりも、熟した瞬間に全てを暴くとどうなるのかという興味が私の中では勝利して。
 

「今は我慢するわっ」

“そんなお楽しみ、待つに決まってる……!!”
 
 パアッと表情を明るくした私は、逸る好奇心を必死に抑えてドアノブから手を離した。


 
「折角だから案内しよう」

 にこやかに笑ったメルヴィが、重ねていた手をそのまま握り歩き出す。

 手を繋ぐのは三回目。
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