ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 この手を振りほどくことが出来ないということは前回でしっかり学んでいる。

“王城内の、それもパーティーがないとあまり使わないような部屋が揃ってたし”

 
 前回よりも人目が少ないだろうと判断した私は、どうせ離せないならばと繋がれた手をぎゅっと握り返して。


「――ッ!?」
「へ?」

 途端にギシッと握った手を固めたメルヴィが息を詰めた。

“え、え? 私何かしちゃった……?”

 ぽかんとした私は一瞬でガチガチに固まってしまった彼をじっと見上げる。
 すると、下から見上げる彼の横顔がじわりと赤らんでいくことに気が付いて。


「まさか、照れてるんですか?」
「別に、その……、握り返されると思わなかったから」
「えっ、だ、だってそれはっ」

 深い意味なんてなかった行為。
 どうせ離してくれないならば、ただ手を掴まれているより互いに握りあっている方が歩きやすいんじゃないかというその程度のこと。


「この間より、人目もないですし」
「うん」
「見られる心配がないなら、困らないし」
「見られても俺は困らないけれど」

“私が困るのよ!”

 思わず内心でそう叫ぶ。
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