ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 一ヶ所に定住なんて、魔女の血が薄い人間にしか出来ないのだ。
 ……が。
 

「その結果子供を置いて出ていきます!?」
「俺に預けに来ただけ想われていただろう」
「そうですけど……」

 本当に不要で捨てたのなら、家に置き去りにすることも出来た。
 生きてるかすら知らないが、話も聞いたことのない実父の家の前に置いていくことも出来た。


 それでも、『この子には魔女の血が流れているから』と師匠の元に訪れ私を預けて旅に出た母は、母としては失格かもしれないがそれでも私を想ってくれていたのだろう。

 
「一ヶ所に留まれないはずなのに唯一この国に定住している変わり者の魔法使いですもんね」

 私が師匠に預けられたのは十歳の頃だった。
 連れていってと懇願してもそれは叶わず、けれどここなら魔法も学べるからと当時十六だった師匠の元を訪れて。

「確かに私は、魔女にしては恵まれているのかもしれません。これからもよろしくお願いしますね、テオ師匠!」

 感謝の気持ちを自分なりに精一杯詰め込んだ笑顔を師匠に向ける。
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