ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 何故か色だけを否定してしまい冷や汗が額に滲んだ。
 もしこの場で『なら結婚式用の純白のドレスを今から作ろう』なんて言われたら――


 そんな想像をした私の背中を冷や汗がつつ、と伝って。


「そうか、なら紺色のドレスをどこで着て貰うか考えなくちゃだね」
「…………、へ?」


 そしてあっさりと話題が結婚式から逸れたことに呆然とする。

“てっきり結婚の方で何か言われると思ったのに”

 少し肩透かしを食らったような気分になりつつも安堵する。
 これでいい、はず。なのに。

“なんでかちょっと寂しい、なんて”

 あまりにも自分勝手な思考に少し落ち込みそうになり、そしてそんな思考を振り払うようにブンブンと大きく頭を左右に振って。


“もしかしたら魔法が解けかかってるのかも”

 今だけなら、それまでは楽しもう。
 逃げるのはその時になってから考えればいいことだから。

「ねぇ! 他にはどんな部屋があるの?」
「ふふ、じゃあ次はあっちの部屋を覗いてみようか」

 今度は私が彼の手を引くように歩きだしたのだった。


 
「今日は何をしようかしら」

“お部屋見学は昨日したし……”
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