ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 そこには見事に不発……どころか、壁や天井にまで制御出来なかった絞っていないモップがびしゃびしゃにしていて。

“これは感謝どころか怒られるやつ!”

 ぎゃっ、とショックを受けた私は反射的に小さく震えながらメイドさんの方を振り向くと、唖然としていたメイドさんはクスクスと小さな笑みを溢す。
 

「ご、ごめんなさい、私」
「大丈夫です、まだそこはお掃除しておりませんでした。今からピカピカにすればいいだけですから」
「……!」

 明らかに手間を増やした私に、嫌な顔すら向けない彼女はにこにことしながら宙をさ迷うモップに飛び付き、力業でバケツで洗ってこれまた力業でモップを絞って。

 
「わ、私も手伝……っ」
「うわっ、この廊下どうしたの?」
「メルヴィっ!」
「ひっ」

 そんな彼女の元へ再び向かおうとした私の腕を引き、唖然としたような声を出すのはもちろんメルヴィ本人だった。
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