ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 結局この十年間母からは連絡が来なかったものの、師匠として、そして時に兄のように側にいてくれた彼と一緒に過ごせたのだから――

「あ、俺明日から旅に出るから」
「なんで!?!?」
「なんかある国で見たことのない鉱石が発掘されたらしい」
「鉱石」
「つまり未知の鉱山だ、行くしかない」
「行くしかない」
「俺がここに留まっていたのも、近くに調べてた鉱山があったからだし」
「そうなんですか!?」

“確かに師匠は良く家を留守にしてたけど、夜には帰ってきてたのに”

 まさかそれが、幼い私を心配したからではなく鉱山が近かったからだなんて!

 てっきり私の為だったと思っていたのでその発言にくらりと目眩がする。
 

“でも、母に置いていかれたあの頃の私とは違うわ!”

 何も出来なかった十歳の子供ではもうない。
 だって今やもう二十歳なのだ、成人した立派な大人の女性なのである。

「連れていってください」
「嫌だ」
「なんで!」

 決死の懇願はまたもや拒絶され、私はショックを受けるが――

「だってリリアナ何も出来ないだろ、危険だ」
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