ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 この動揺を悟られまい、とこっそり深呼吸した私は平然を装って彼へと向き直り。

「もしかしてメルヴィは少し意地悪なんですか?」
「今からはメルと呼んで。メルヴィ、なんて呼ばれたら折角この服を着ている意味がなくなるでしょう?」

 ね? と満面の笑みを向けられ撃沈する。
 そもそも彼の顔はドストライクなのだ。

“イケメン、ずるい……!”

「わかったわよ、今だけだからね。……メル」

 少し恥ずかしさが混じり尻すぼみになりながらそう言うと、ちゃんと聞き取ってくれたらしいメルヴィが再び私に満面の笑みを向けたのだった。



 そんな私たちがまず最初に向かったのは。

「ねっ、ねっ! これ! これプルプルしてるわ!」
「スイーツみたいだね、でもそれは石鹸だから食べられないよ」
「さ、流石に魔女の私でも石鹸を食べたらどうなるかなんて……そんな好奇心……」
「持たないよね!?」

“こんな服じゃ堪能出来ない、なんて誰が言ったのかしら”

 王城へ行くまでの馬車内で見かけたあの石鹸のお店だった。
 あんなに不安だったのに気付けば私は完全に周りの視線なんてそっちのけで楽しんでしまっていて。

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