ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「あら? メルヴィも買ったの?」
「あぁ。店主から新婚さんにお勧めと紹介された石鹸をね」
「っ」

“その設定は店内でだけで良かったのに”

 さらりとそう告げられ、まるで本当に私たちが新婚夫婦になったような錯覚に陥りそうになる。

“そもそもメルヴィが私を見てくれてるのは魔法の影響なんだから”

 だから、あまり彼の言動に振り回されないようにしなくちゃ、と自分に言い聞かせていた時だった。


「――んっ」

「?」

 お店から出たすぐ近くの細い路地から声が聞こえて振り返る。

 メルヴィには聞こえていなかったのか、キョロキョロとした私を不思議そうな顔で見ていて。


“何の声……?”

 気になった私は、そっと声がする路地へと少しだけ進み曲がり角の先をメルヴィと覗く。
 すると、なんと濃厚なキスをしているカップルがいた。

 
“何あれ!? なんでこんなところで!”

 しかも服の上からやわやわと胸を揉んでいる。

 
「ん、んんっ」

 漏れ聞こえる吐息。
 ずっと揉まれている胸。

 溢れる声はどこか切なさと気持ちよさを感じさせて、覗いていた私の息も少し上がってしまう。
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