ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「そんなことありませんけど!? トイレもお風呂も一人で出来るし、お使いだって出来ます!」
「自分がいくつの設定だ。魔法が使えなきゃ危険だし足手まといなんだよ」
「うぐぐ」

 痛いところを突かれれば反論なんて出来ない訳で。


「今回は様子見だ。そんなに長くはかからん」
「すぐに帰って来るってことですか?」
「少なくともここに帰ってくる」

“ここに……”

 それは遠回しに私を捨てたわけではないと言ってくれてるのだとわかった。

 ぶっきらぼうで空気も読めずデリカシーもない師匠だが――

「おい、なんか失礼なこと考えてないか?」

 ――それでも、彼がここに帰ってきてくれるなら。


「わかりました、お留守番……しています」
「あぁ」

 長く伸ばした私の黒髪を、もう二十歳になったのにまるで幼い子を可愛がるようにガシガシと撫でる。

“寂しくない訳じゃないけど”
 
 その手が思ったよりもずっと温かかったから、私は師匠が帰ってきてくれるまでここで待つのだと確信した。


「ついでだから宿題だ」
「宿題!?」
「俺が戻ってくるまでに魔法を使えるようになっておけ」
「嘘でしょ!?」
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