ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“あそこの棚の左から四冊目が薬草の本だわ”

 そんな確信にも似た予感がし、その棚を確かめに歩き出して。

 
「リリ、こっち」

 ふらふらと歩き始めていた私の手をしっかりと握り直したメルヴィに促された先には、一人で寝るには十分なサイズのベッドがあった。

「――ッ!」

 ドクン、と一際大きく心臓が跳ねる。

“メルヴィはどこまでするつもりなのかしら”

 覗き見た二人は口付けをしていて。

「リリ」

 そっとメルヴィの顔が近付き、目を閉じるべきだと頭では理解しているのにまるで固まったように見開いたまま停止してしまう。

 彼の紺の瞳が閉じられ、思ったよりも長く艶やかな睫毛に縁取られているのをただただ見つめ――


「んっ」

 ちゅ、と私たちの唇がそっと重なったのだった。
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