ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「ふふ、いい侍女だね」
「恐縮でございます」

 強制的に重ねられた手を撫でる……ふりをしてエスコートで出してくれていた手と反対の手で上から押さえられる。

“こ、これは!”

「さ、行こうね」
「手、手が!」
「ふふ」
「手がぁぁあ!」

 そのまま強制エスコートでメルヴィと並んで歩き始めたのをエッダが一礼して見送ってくれた。



「薬草畑は初日に見たから今日はこっちから見に行こうか」

 エスコートをされるなんて人生初の私は、それだけで落ち着かず心臓が暴れる。

「リリ?」
「あ、はいっ!?」

 そんな私を怪訝に思ったのか、メルヴィがそっと私の表情を確認するように覗く。
 その彼の平然とした顔を見ていたら、私はなんだか段々と腹が立ってきて。

  
“何よ、私だけこんなにドキドキしてるの?”

 焦っているのも余裕がないのも私だけ。
 そんなのって、不公平なんじゃないだろうか。

 折角ならメルヴィだって焦って欲しい。
 ふとそんな考えが私の脳内を過り――

“焦って赤面するメルヴィってどんなのかしら”

 そんな疑問に辿り着く。


 気になる。
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