ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 いつもどこか余裕そうで落ち着いている彼が、焦り、戸惑っているその姿が。

 見たい、と一度思ってしまうと止められない。
 沸き上がる好奇心。

 驚かせたい、焦らせたい。
 彼から余裕を奪いたい。

“昨日のメルヴィは、どこか切羽詰まってたわ”

 ならば、昨日と同じようなことをすれば、この余裕を奪えるかもしれない。

 昨日と、同じようなことをすれば。
 

「ッ!」
「リリ!? ちょ、いきなり顔が赤くなったけど」
「気のせいですけど」
「いやいや、今も更に赤くなってるけど」
「そんなことないですけど」
「そんなことありますけど」

 ギョッとした彼の視線が更に私の頬を熱くさせる。

“昨日みたいなことを、私から?”

 想像するだけでもハードルの高いその行為が私に出来るはずなんてない。
 それに、メルヴィにはしたないと呆れられるかも、と思うと心が冷えた。 
 
 魔女の習性的には気になって仕方ないことは試さずにはいられないはず。

 
“師匠はそれなりに血が濃いって言ってくれていたけれど”

 
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