ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 捲し立てるように話す私に驚いたメルヴィが慌てて私を落ち着かせるよう両肩に手を置くが、正直それどころではない。

「どこが悪いのか教えて! 私ポンコツだけど、精一杯メルヴィが元気になるように願うから!」

 魔法で病気は治せない。
 願いの力はそこまで万能ではないからだ。

“でも、何もしないより絶対マシだから……!”

「だからっ」
「誤解だから!」
「……ご、誤解?」

 気まずそうに小さく叫んだメルヴィに呆然とする。

“誤解ってことは、メルヴィはどこも悪くないってこと?”

「よ、良かった」
「リリ?」
「メルヴィが元気なら良かった……!」

 安堵からふっと全身から力が抜けた私は、そのままふらりと目の前のメルヴィの胸に飛び込み体を抱き締める。

「驚かせないで」
「ッ、驚いてるの、俺の方なんだけど……っ」

 彼の胸に触れた頬から鼓動が伝わる。
 驚いている、というその言葉の通り早鐘を打つ彼の心音から動揺しているようで……

「って、ごめんなさい!!」

 やっと抱き着いているということに気が付いた私は慌てて後ろへ飛び退き彼から距離を取った。

“安心したからってあんな……!”
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