ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 はしたないと思われたくない、なんて誰が言ったのか。
 自分からがっつり抱き着いてしまったせいで、私の頬が熱くなる。


「……メルヴィ?」

 恥ずかしさから自分の頬を手で覆いつつ、ちらっと彼の方を盗み見ると、メルヴィの頬も赤く染まっていることに気が付いた。


“メルヴィも照れてる?”

 そう気付いた私の顔は、さっきよりも更に熱くなった気がして。


「そ、それにしても薬草ばっかり、どうして選んだの?」

 落ち着かない心を誤魔化すように無理やり話題を変える。
 優しいメルヴィなら、察してすぐ私の話に乗ってくれると思ったのだが、何故かいつまでたっても彼からの返事が来ないことに首を傾げた。


“どうしたのかしら”

 彼の様子を窺うべくそっと視線を向けると、何故かさっきよりも顔を赤くした彼がそこにいて。


「…………んだ」
「?」
「魔女は、薬草が好きだと思ったんだ」
「……あ、え?」

“魔女が?”

 そういえば王城に着いた時も、魔女が薬草を煎じるのかどうか気にしていたことを思い出す。
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