ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 また元の絵本を知らないからこそ余計な想像が出来ないからかもしれない。

「――あっ」

 ふわ、と足元が床から離れる。

「んっ、い、いだッ、いだだだッ」
「リリアナ様!?」

 体重を支えるのがめり込んだ大事な部分だったせいか、想定外の痛みに襲われた私は慌てて箒の柄を両足で挟む。

 そのお陰か痛みと、そして両足で挟んだことによりバランスも取れて。

“飛べ、てる……!?”

 痛みから少し解放されたお陰か少し冷静になった私は辺りを見渡す余裕が出来て。

“私は今、エッダが読んでいたという絵本の魔法使いのように空を飛んで――”


「……エッダ、私、飛んでる?」
「そうですね、えっと……僅かに……」

“僅かに。うん、確かに”

 エッダの気遣いがチクリと刺さる。
 それもそのはず、宙には浮いている、浮いてはいるのだ、数センチほどは。


「で、でも浮かんでるってことは飛んでると同義なんだからッ!」

 そもそもここは室内だ、高く飛びすぎて天井で頭をぶつけたりそのまま墜落することを考えればこの程度の高さが丁度いい。
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