ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“つまりこの間みたいなことをしようとしたってこと!?”

 ベッドと聞いて思い出されるのはもちろんあの小部屋での行為。
 そしてまだ先のある行為、である。

「ど、どうして?」

 ここで理由を聞くのはあまり得策ではないと私自身もわかっていたが、これもやはり魔女の性。
 気になってしまった以上は最後まで答えを聞かなくてはおさまらなくて。


「リリが、俺の気持ちを疑ってるみたいだから」
「疑ってる?」
「俺が好きなのは、リリなのに」

“私が言った言葉、気にしてたの?”

 拗ねた表情のままそう言われると、私より少し年上のはずの彼がなんだか可愛く見えて胸の奥がきゅんとする。

 けれど、彼の気持ちは他の魔女へと向いていたはずだし、それに今私を見てくれているのは私の魔法が効いているからだった。


 しかしそれを上手く誤魔化しながら都合よく説明する、なんて私には出来そうになくて。

“それにそんな不誠実なこと、彼にはしたくない”
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