ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 最も不誠実な『気持ちを勝手に変える』という行為をしてしまったからこそ、これ以上はそんなことしたくなく、そして何故かはわからないが彼には真っ直ぐ向き合いたいという気持ちが私の中に芽生えていた。


“伝えてしまったら、ここで終わりだわ”

 私がかけた魔法で好きだと勘違いしてるだけ。
 そう告げれば全てが終わる。
 
 もし私の魔法のせいでそれを彼が信じなくても、来てくれるかわからないのに薬草畑を作って待っているという行為と当てはめれば、どちらが真実かは明白だろう。

 だからこそ私はごくりと唾を呑み、意を決して彼に真っ直ぐ向き直って。


「思い出して、私が街で貴方に魔法をかけたことを」
「私を好きになーれ、ってやつかな」
「そっ、そう、ね……!?」

“改めて言われるこの台詞の破壊力!”

 せめて他の言い回しをしていれば、なんて頭を抱えそうになるが、なんとか気合いで気持ちを整えた私はそのまま更に口を開いた。


「あの時の魔法で、メルヴィは私を好きになってしまったの」
「違うけど」
< 86 / 231 >

この作品をシェア

pagetop