ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「その証拠に、メルヴィが作った薬草畑を思い出してみて。畑を王城に作ってまで興味を引きたい想い人がいるのよ」

“あぁ、言ったわ。これできっと、全て終わり――”

「だからそれが、リリなんだ」
「………………へ?」
「街で会った時の魔法が効いてるか、正確には俺にもわからないよ。だって魔法をかけられる前からリリのことが好きだったから」
「え、え? でも、薬草畑は……」
「それはリリが昔っ」

 だから、と話を続けようとしたメルヴィの口を慌てて塞ぐ。

“もしかして、私の魔法のせいでその彼女との思い出まで私との思い出だと上書きされちゃったってこと!?”

 その可能性に辿り着いた私はゾッと体から血の気が引くのを感じると同時に、それが事実だと確定しなければまだ彼の想い人でいられるのだというズルい考えが芽生えた。


“彼の口から出る『昔』のことが本当に私自身のことで、私が昔のことを忘れているだけなら……”

 それは余りにも愚かな考えだと理解はしていたけれど。


「俺の言葉を遮ったのも魔女の習性?」
「え、えぇ。そうみたい」
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