ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 すぐ目の前までやってきた彼にごくりと唾を呑む。

 師匠も妖艶なイケメンだったが、どちらかといえば儚い美人で麗しく観賞用という印象が強かった。
 どこか鋭さも持っており、触れる事を躊躇わせる美しさ。

 けれど彼は違う。

 健康的であり、温かく包んでくれるのではと思わせるような柔らかさを兼ね備えていて。

“こ、これが噂に聞く一目惚れってやつなんじゃないの!?”

 気になる。
 この穏やかで、しかし少し不思議そうに私を見つめるその瞳が、『想い人』相手ならどんな熱に変換されるのか。

 気になる。
 もし私が彼の唯一なら、どんな時間を過ごすのか。


 十歳になるまでは母と二人、それ以降はやたらと美人な師匠と二人だった。

 こうやって自分を見つめる男性となんて出会ったことのなかった私は、これも魔女の習性なのだろう。

 私を見つめるこの瞳が、『私』を認識し『私』相手に向けられるものになるとどうなるのかが気になって気になって仕方がなくて。


「あの、君はもしかして……」
「そこのイケメンさん、私を好きになーれっ」
「……へ?」

 気が付けば私はそんな願いを口に出していた。

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