ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「だ、だって紺色の本しか許されない感じだったから!」
「うんうん、そうだね」
「本当だから! べ、別に私が部屋をメルヴィの色で統一したい訳じゃないっていうか」
「そうかそうか」
「メルヴィの色だからとかじゃなくて、その、他の色が混ざると浮くって思って」
「ふふ、本のタイトルが気になったとかじゃなくてリリも色で選んでくれたんだね」
「だ、だからぁっ!」

 必死に弁解すれば弁解するほど深みに嵌まっている。
 そしてそんな私に追い討ちをかけるようにくすくすと笑っていたメルヴィが気付けば私の目の前にまで近付いて。

「可愛いね」
「!!」

 ちゅ、とおでこに口付けられ、焦って三歩後ろに飛び退いた。

「こ、ここ店の中なんだけど」
「だから額にしたんだけど」
「おでこだからいいってことじゃないんだけど!?」
「どこを選んでもダメだったなら、いっそ唇にしたけど」
「おでこでありがとうございます!!」

 ひえぇ、と羞恥から半泣きになった私を見ながら相変わらずにっこりと笑っているメルヴィに愕然とする。

“覚悟って、覚悟って……! 思っているのとは全然違う覚悟なんだけどぉお!”
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