ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 どこまで彼に近付いてもいいのか、いつまで許されるのか。
 彼に心を許しすぎて、正気に戻った時に拒絶されたら。

 彼がまるで当たり前だというように私へ触れたからかもしれない。
 もう許されない距離感を望む自分が想像できて少し怖くなった。


「誰に見られるかわからないので嫌です」
「それはつまり、誰にも見られないところで色々したいってこと?」
「なんでそうなったんですか!? 全然違いますけど!」
「そう? じゃあ手を繋いでデートの続きをするか、……そうだな、さっきの続きをしにあの小部屋へ帰るのもいいかもね」
「手を繋ぎます!」

 そんな小さな葛藤をぶち壊すようなメルヴィの言葉にぎょっとした私が慌てて彼の手を握ると、すぐにぎゅっと、そしてがっしりがっつりと手を握り返される。
 

“いや、つよ……”

 痛くはないが、離さないという意志が繋がれた手から伝わり思わず苦笑した私は、それでも嫌悪感は感じなくて。

“むしろ嬉しいなんて”

 これは本格的にマズイ。
 
 
「……って、いつから選択肢は二つしかなくなったんですか!? 手を繋がずにお買い物という可能性もあったのでは!」
< 94 / 231 >

この作品をシェア

pagetop