ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 今の私たちは完全に庶民の服に身を包んでいて、完全にこの店の雰囲気から浮いていた、のだが。


「紺色のドレスはあるかな」
「はい、ただいまお持ちいたします」

 何も言われないどころか嫌そうな顔もせず、メルヴィの言葉を聞いた店員だろう女性がすぐに店の奥へと向かった。


「ね、ねぇ、私たち追い出されたりしない?」
「え、なんで?」

 二人きりになったタイミングで彼にそう耳打ちするが、私の言ってる意味がわからなかったのか怪訝な顔を向けられて。

「だって私たち、今こんな格好で……!」
「あぁ、大丈夫だよ。ちゃんと俺たちが何者かはわかってるから」
「えぇっ!」

 あっけらかんとそう言われ唖然とする。

“それってメルヴィが王太子だって気付いてるってことよね”

 一緒に店内に入ったのだ。
 彼が身分を表す何かを見せている様子はなかった。

 ならば、どこで気付いたというのだろう?

 気になる。
 どこで身分を明らかにしたのか。
 
 それにさっきの書店でも、前回行った石鹸のお店でも彼を王太子として接しているようには見えなくて。

“なんでこの店でだけわかったのかしら”
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