【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 かと思ったら、「ちょうど俺、恋人作ろうと思ってたんだよね」と言われる。

「はっ?」

 急になにを言い出すの……!? 

「恋人。結婚を前提にさ」

「はっ……?」

「だから、俺は奏音を恋人にすることに決めた」

 な、なに、なにを言ってんの?! また勝手に決めてるし……!

「勝手に決めないでください! わ、私は、恋愛なんてしなくていいですっ」

 恋愛なんかで、私が挫折したくない。

「奏音はさ、なんでそんなに恋愛したくない訳?」
 
 真剣な顔でそんなことを聞かれて、私は思わず「……恋愛で自分を、ダメにしたくないからです」と答えてしまった。

「ダメにしたくない、って?」

「……私が恋愛に躓くことで、自分の人生をダメにしたくないんです。 仕事にもプライベートにも全力を出したい。 だからこそ、恋愛なんかでそれを奪われたくないんです」

 そう答えた私に、百合原さんは「そんなこと、ないと思うけど」と真剣な眼差しを向けてくる。

「……え?」

「奏音は分からないかもしれないけど、恋愛でダメになることなんて、いくらでもある。 だけどダメになったからこそ、自分の知らない自分を見つけてくれる人がいる。自分を素直に受け入れる人が、そこにいるんだ」
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