【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


「緊張してるのか? かわいいな、奏音は」

「か、か、かわいいとか……言われても、反応に困りますっ」

 どれだけ素直なんだ、奏音は。この可愛さは、何なんだ。

「……なあ、奏音」

「は、はい……」

 俺は奏音の頭に手を添えると、「俺は奏音と本気の恋愛がしたい。 だから、俺の全てを奏音には知ってほしい」と伝えた。

「……全て、って?」

「俺の全てだよ。奏音には、俺のことを全部知り尽くしてほしい。ありとあらゆる全部を、しっかり見てほしい」

 こんなに俺の全てを見てほしいと思ったことなんて、あっただろうか。
 いや、多分なかったと思う。こんなに真剣に思ったことはなかったはずだ。

「全部……知ってほしいんですか?」

「そうだ。全部、知ってほしい」

「……難しいこと、言いますね」

 そりゃそうか。奏音からしてみたら、そうだと思う。

「奏音は、俺のこと知りたくない?」

「……分かりません」

 これが奏音の素直な気持ちだということは、俺も分かっている。
 やっぱりちょっと、強引すぎたか……?

「でも……。百合原さんの気持ちは、よく分かりました」

「ん?」

「その……せっかくなので、出来る所まで、頑張ってみようと思います」
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