【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。
私と百合原さんの初めてのデートは、ピクニックだった。
デートしようと言われて決めた場所は、ずっと行きたかったピクニックだった。
でもあの日のピクニックで、私は百合原さんとの距離がまた少しだけ縮まったような気がした。
あの日私は、百合原さんと二度目のキスをした。でもその時私は、なぜか無意識に目を閉じていた。
最初にファーストキスを奪われたあの時、目を閉じるものだと言われたことを思い出したからなのかは、分からない。
「偉いな。今度はちゃんと、目を閉じてたな」
そう言われた時のあの百合原さんの笑顔を、私は多分ずっと覚えると思う。
「……あ、あのっ」
「ん?」
「今日は楽しかった……ですか?」
私にはまだ、デートが楽しいという気持ちはよく分からない。でももし、百合原さんが楽しかったと思ってくれたら、嬉しいなって思った。
「俺は楽しかったよ、すごく。 奏音は?」
「……楽しかったのかは、分かりません。でも……なんか、心が晴れて明るくなった気がしました」
これは私の本音だ。私が本当に思ったこと。
「それならよかった」
「え……?」
「奏音が少しでも楽しい気持ちになれたなら、よかったよ」